2012年01月23日

DICについて

昨日参加したセミナーで、DICについてのいくつか情報を聞いてきました。

最も印象に残ったのは、現状、動物病院で検査できる項目のうち、DICになる前、あるいはDICを起こしたごく初期にそれを把握できるものはないということです。

DICは様々な感染症や腫瘍などの疾患により、免疫状態が活性化し、その結果血液の凝固系が活性化して、血液凝固因子の枯渇による出血傾向や微小な血栓を形成して多臓器不全を起こす病態です。
DICが始まっている時点では、臓器の障害や、程度の差はありますが出血傾向の兆候は出ているということになります。
したがって、DICの弊害を出さないためには、DICを起こす前に予防的なヘパリンや超低用量のアスピリン投与が重要になります。

現在、一般的な動物病院では血小板数やPT、APTTといった凝固系検査、FDPなどの検査を組み合わせてDICの診断を行なっています。
これよりも先行してDIC時に変化を認めるマーカーは、人医領域でも治験段階らしく、動物病院でベッドサイドで検査できるのはまだまだ先でしょう。

結論としては、DICが危惧される状態では、勇気を持って先行してDICの対処をすべきということでした。
食欲のある、比較的状態の良いケースでは、アスピリンという昔からある安価な薬で予防効果は期待できるということですので、より積極的にアプローチしていくことで病気の治癒率が向上することを期待します。
posted by sora-vet at 11:04| Comment(0) | 血液

2012年01月14日

元気、食欲が無い

動物病院に来院される主訴で、最も困ってしまうのが、『昨日から元気、食欲が無いのですが…。』といわれることです。
これは、ありとあらゆる病気から起こる症状だからです。

この場合、まず年齢、性別、飼育環境などから、いくつかの病気を想像します。
次に問診を行なって、それぞれの病気に特徴的な症状が出ていないか、一つ一つ鑑別していきます。
よりポイントとなるのは、
いつから、どの程度調子がわるいのか、
だんだん悪くなっているのか、
その前に、いつもと変わったことをしなかったか、
嘔吐や咳などの症状はあるか、
飲水量が増加していないか、
排便、排尿はあるか、
などです。

次に、一度頭の中から疑われる病気を忘れて、一般身体検査をしていきます。
当院では、できるだけ見落としの無いように、頭から順に、
口腔内の状態、粘膜の色(貧血や低血圧、チアノーゼなど)、
眼の状態(瞳孔のサイズや眼振、結膜の色(黄疸や結膜炎)や眼底の出血)、
頸部のリンパ節や腫瘤、咳の誘発、呼吸の状態、
体幹部の腫瘤や出血斑の有無、
四肢の疼痛や腫れ、関節の状態、
10kg以下の子であれば(10kgを超える緊張した子では困難なことが多いです)、お腹の中の臓器の触診(肝臓、胃、小腸、脾臓、腎臓、直腸、リンパ節、膀胱)、
肛門周囲の状態、
全身の体表のリンパ節の状態、
心音、肺音、気管の聴診、
検温、検便
などを行なって、異常所見がないか確認していきます。
異常が見られた場合には、それらに対して検査、治療をしていきます。

困ってしまうのは、特に異常がない場合です。
その際は、各種スクリーニング検査を行なっていくか、経過を観察していくかを動物の状態と合わせてオーナー様と相談することになります。
その場合も、特に検査を必要ないと考えているわけではありませんので、ご心配でしたらお気軽に検査をご依頼ください。
posted by sora-vet at 09:15| Comment(0) | 日記

2012年01月09日

腫瘍の治療について

腫瘍の治療には、根治療法、緩和療法、対症療法があります。

根治療法は文字通り腫瘍を完全に治してしまう治療です。
根治療法が達成されれば、補助的な治療は必要なくなります。
治療法としては、外科手術が第一選択で、ごく一部の腫瘍に関しては放射線治療でも根治が望めます。
化学療法(抗がん剤)では、人間の白血病などは非常に強力な抗癌剤治療後に骨髄移植することで根治が望めますが、獣医領域ではアメリカの一部大学でリンパ腫に対して骨髄移植を併用して根治を達成していますが、一般的には根治はできません。
外科手術も、根治的マージンでの手術は、より広範囲に正常部分を含めて切除します。
手術が成功すれば、あとは再発、転移の経過観察のみになります。

緩和療法は、完全切除が不可能な腫瘍や、すでに転移のある腫瘍などに対して出来る限り減量し、進行を少しでも遅らせる治療です。
ですので、緩和療法ではがんとの共存を行うことになります。
いつかはがんが進行しますが、その前にがんとは全く関係ない病気や、いわゆる寿命を迎える場合もあります。
治療法は、外科療法、化学療法、放射線療法などを組み合わせて行います。
緩和療法では、腫瘍の種類や場所、大きさ、転移の程度などにより目標となる生存期間を考えて行なっていきます。
また、比較的長期生存(1年以上)を目指して治療しますので、一時的なQOLの低下を招くこともあります。
外科手術後の補助的治療を行う場合、基本的にはがん細胞が残存している前提ですので、外科手術も含めて緩和治療という位置づけになります。(はじめは根治を目指して、病理検査の結果により転移の疑いを認め、緩和治療に移行するという考えになります)
また現状では、動物に対するリンパ腫や白血病に対する抗癌剤治療も、基本的にはこの範疇に含まれます。

対症療法は、腫瘍が進行することを抑えることができない場合に、生活の質の向上させるための治療です。
例えば、明らかに肺などに転移のある乳腺腫瘍に対し、腫瘍からの出血が激しいために止血のための外科手術や、足が痛くて歩けない骨肉腫の子の痛みを除去するための断脚、口に大きな腫瘍があり、呼吸困難を起こしているこの気管切開などがあります。
対症療法というと非常に消極的に思われますが、実際には本当に楽にしてあげようと思うと外科的な治療が必要となることが多いです。
末期の患者さんに外科治療は苦しみを増やすだけに一見思われますが、より大きな痛みや苦しみを除去してあげることで、たとえ短期間でも穏やかに暮らせることも多々あります。

これらの治療法の選択には、正確な診断と病気に対するご家族に理解や考え方に基づいて行われます。
したがって、今の病気がどんなもので、どの程度進行しているかについては、きちんとした検査が必要なことはご理解ください。
posted by sora-vet at 11:22| Comment(1) | がん