2011年11月07日

犬の肝臓疾患

今回は犬の肝疾患の中で、特に頻度の高い病気について書きます。

若い犬で問題となることの多い肝臓の病気では、門脈シャントというものがあります。
この病気は、本来肝臓の門脈という血管に流れるべき血液が、血管の先天性の異常により肝臓を介さずに直接心臓へ戻ってしまうという病気です。
症状の強い子では、発育不良、尿路結石、高アンモニア血症による神経症状などが起こりますが、去勢や避妊手術前の血液検査で偶然見つかるケースも多いです。
診断は、レントゲン、エコーなどで小肝症を確認し、アンモニア・胆汁酸負荷試験(血液検査)などで肝機能低下を認める場合に血管造影やCTなどで確定診断をします。
基本的には外科手術で治療する病気です。

中齢では、胆嚢粘液嚢腫という病気が多いです。
この病気は、本来サラサラである胆汁が、高脂血症などの影響で固く、ゼリー状になってしまうという病気です。
進行すると、突然の黄疸や胆嚢破裂を起こします。
治療としては、基本的には外科的に胆嚢を切除する病気ですが、初期の場合は高脂血症の治療や胆汁排泄を促進させたりすることで維持、改善できる場合もあります。
胆嚢の病気では、犬にも胆泥症、胆石はありますが、通常黄疸等が出ない限り手術をすることはほとんどありません。

高齢では肝臓に関する腫瘍の頻度が増加します。
肝臓に発生する腫瘍では、肝細胞癌、胆管癌、血管肉腫、リンパ腫、転移性腫瘍などがあります。
このうち、リンパ腫は抗癌剤治療の適応になることが多いです。
肝臓にある孤立性の腫瘍であれば、外科手術により肝葉切除を行なって治療できる可能性があります。
ただし、肝細胞癌などでは、慢性肝炎や肝細胞の変性が進んでいることが多く、そちらの原因疾患の治療が難しいことも多いです。
血管肉腫は、多くの場合肝臓単発でなく、脾臓から発生していることが多いため、肝臓に関して外科的治療がされることは少ないです。

その他、肝膿瘍、慢性肝炎、銅蓄積性肝障害等がありますが、前回にお話ししたように、肝臓の数値の上昇原因としては2次的な肝障害が最も多いため、そのあたりの病気の鑑別が最も重要でしょう。
posted by sora-vet at 09:38| Comment(0) | 肝臓
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