2012年06月12日

犬の皮膚炎の診断・治療

長らくブログを放置してしまいました。
申し訳ありません。

暑くなってきて、皮膚病の患者さんが少しづつ増えてきました。

人間の皮膚科の先生は、診察室に入って、少し話をして、症状を観察しただけで検査をしなくても的確に診断、治療をしてくれます。
一方、動物病院では問診、視診はもちろんですが、皮膚を削ったり、ガラスなどを押し当てたり、場合によっては血液検査などをしてもはっきりとした診断がつかないこともよくあります。
どこに違いがあるのでしょうか?
その答えは『経験』です。
人医療では皮膚炎のでき方、見た目、場所、年齢、時期などでほとんど鑑別診断ができてしまうそうです。
治療に対する反応が悪い時だけ検査の適応になるのでしょう。

動物でも、皮膚炎の分布、形態によってある程度の診断指針にはなります。
しかし、単一の病気ではないことも多く、ひとつひとつ除外しながら診断していくことが必要となります。
また、痒い所をバリバリに掻いてしまうと、その部位の病変は皮膚のビランだけになってしまいます。
その中から、今起こっている皮膚病に特異的なところを探して検査していくのですが、なかなか見つからないこともあります。

したがって、ひとつひとつて順をおって除外診断、治療をしていきます。

まずは発症時期や季節性について考えます。
一般にアトピー性皮膚炎は初発が3歳までに起こり、季節性が見られることが多いです。
また、痒くなるのも目の周りや、耳、脇、内股、おしりなどで、背中側が痒くなることはほとんどありません。(同時にノミアレルギーなどが起こっている場合は背中も痒くなることはあります。)
また、ある程度犬種特異性があります。

次に、毛を抜いたり、皮膚を削ってカビや寄生虫の有無を検査しますが、1回の検査では検出できないダニなども多くあります。
したがって、これは来院のたびにチェックします。
アトピーと思われていた皮膚炎がダニによるものだったということも、よくあります。

カビ、ダニが除外されたら、皮膚表面の細菌やマラセチア、出現している炎症細胞や特殊な細胞をチェックします。
アレルギー性皮膚炎の場合でも、多くは細菌性の皮膚炎を合併しており、その場合は細菌性皮膚炎の治療を優先して行なってからアレルギーについて考えていきます。
また、アレルギーが基礎疾患としてあった場合でも、細菌やマラセチアの管理をきちんとすることで、ステロイドや免疫抑制剤の治療を必要としないこともあります。

それでも十分に管理できない皮膚炎やかゆみがあるときは、アレルギーを考えていきます。
ここまでで治療される皮膚炎は完治が出来る病気です。
逆に、それでも痒みが残る場合はアレルギーや角化障害など、治すことのできない皮膚炎で、薬やシャンプー、フード、環境改善などでうまくコントロールして行かなければいけない病気ということになります。

10年前に比べると、皮膚病の患者さんはかなり減ったような気がします。
おそらくフードの質の向上、飼育環境の改善、シャンプーの習慣などの影響と思われます。

慢性の皮膚炎の子を飼育されているオーナーさんは、色々と悩みが多いとは思いますが、出来る範囲でかゆみ等を管理する方法を考えてあげましょう。
posted by sora-vet at 10:55| Comment(1) | 皮膚病
この記事へのコメント
はじめまして。
いろいろ検索している中で、
先生のブログに行き着き、
いろいろと勉強させていただいています。
お忙しい中の更新は非常に難しいでしょうが、
ぜひ読ませて頂きたく、
催促のコメントを書き込みました(笑
催促は冗談ですが、
また思いつくままに、
先生の獣医療に対する考え方を発信していただければと思いました。

それでは、失礼します。
Posted by ちょびころ at 2015年10月08日 14:54
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: