腫瘍の治療には、根治療法、緩和療法、対症療法があります。
根治療法は文字通り腫瘍を完全に治してしまう治療です。
根治療法が達成されれば、補助的な治療は必要なくなります。
治療法としては、外科手術が第一選択で、ごく一部の腫瘍に関しては放射線治療でも根治が望めます。
化学療法(抗がん剤)では、人間の白血病などは非常に強力な抗癌剤治療後に骨髄移植することで根治が望めますが、獣医領域ではアメリカの一部大学でリンパ腫に対して骨髄移植を併用して根治を達成していますが、一般的には根治はできません。
外科手術も、根治的マージンでの手術は、より広範囲に正常部分を含めて切除します。
手術が成功すれば、あとは再発、転移の経過観察のみになります。
緩和療法は、完全切除が不可能な腫瘍や、すでに転移のある腫瘍などに対して出来る限り減量し、進行を少しでも遅らせる治療です。
ですので、緩和療法ではがんとの共存を行うことになります。
いつかはがんが進行しますが、その前にがんとは全く関係ない病気や、いわゆる寿命を迎える場合もあります。
治療法は、外科療法、化学療法、放射線療法などを組み合わせて行います。
緩和療法では、腫瘍の種類や場所、大きさ、転移の程度などにより目標となる生存期間を考えて行なっていきます。
また、比較的長期生存(1年以上)を目指して治療しますので、一時的なQOLの低下を招くこともあります。
外科手術後の補助的治療を行う場合、基本的にはがん細胞が残存している前提ですので、外科手術も含めて緩和治療という位置づけになります。(はじめは根治を目指して、病理検査の結果により転移の疑いを認め、緩和治療に移行するという考えになります)
また現状では、動物に対するリンパ腫や白血病に対する抗癌剤治療も、基本的にはこの範疇に含まれます。
対症療法は、腫瘍が進行することを抑えることができない場合に、生活の質の向上させるための治療です。
例えば、明らかに肺などに転移のある乳腺腫瘍に対し、腫瘍からの出血が激しいために止血のための外科手術や、足が痛くて歩けない骨肉腫の子の痛みを除去するための断脚、口に大きな腫瘍があり、呼吸困難を起こしているこの気管切開などがあります。
対症療法というと非常に消極的に思われますが、実際には本当に楽にしてあげようと思うと外科的な治療が必要となることが多いです。
末期の患者さんに外科治療は苦しみを増やすだけに一見思われますが、より大きな痛みや苦しみを除去してあげることで、たとえ短期間でも穏やかに暮らせることも多々あります。
これらの治療法の選択には、正確な診断と病気に対するご家族に理解や考え方に基づいて行われます。
したがって、今の病気がどんなもので、どの程度進行しているかについては、きちんとした検査が必要なことはご理解ください。
2012年01月09日
腫瘍の治療について
posted by sora-vet at 11:22| Comment(1)
| がん
2011年10月01日
皮膚腫瘍について
ご家族の皆さんが最も気づいてあげやすい腫瘍は、皮膚表面の腫瘍だと思います。
たまに、動物病院での健診でも発見できないような小さなできもので来院される患者さんもいらっしゃいます。
皮膚表面のできもので来院された場合、発生場所、発症期間(増殖スピード)、大きさの測定、形態、硬さ、痛み、炎症の有無、リンパ節の大きさの評価などを問診、視診、触診などで行います。
これらは注意すればご自宅でもできると思います。
いつも全身をくまなく触って、特に足先、内股、足の裏(パッド)、口の中(舌の下側)などまで気にかけてあげるとよいでしょう。
これらの部位は、腫瘍が少し大きくなってしまっただけで、良性腫瘍でも断脚等、大きな手術が必要になることがあります。
また、ずっと同じ大きさだったのに、ここ最近大きくなってきただとか、ゆっくりだけど大きくなって3cmを超えてきた、コリッとしていなくて境目がよくわからない、熱を持っていたり痛がるなどの徴候が見られるときは早めの受診をお勧めします。
その後、細胞診といって、可能な限り針をさして細胞を採取し、その評価を行います。
ここでの大きな目的は、腫瘍なのか炎症なのか、特定の注意が必要な腫瘍ではないか、非常に悪性度の高い腫瘍かどうかといった判断をします。
この検査は、診断や治療の方向性を決めるもので、腫瘍を断定するものではありません。
同時に、リンパ節の腫れを認めた場合には転移の可能性を同様に検査します。
腫瘍の可能性が高いと判断された場合、治療法の検討に入ります。
その後、レントゲンやエコー、血液検査などで全身状態や遠隔転移などを評価して治療法をご家族と相談していきます。
よく飼い主様から受ける質問で、『様子を見ていいですか?』というものがありますが、明らかな良性腫瘍で身体に影響のないものを除き、ご家族が気になるようでしたら積極的に切除したほうがいいでしょう。
現在の獣医療では、一度転移を起こしてしまった腫瘍は、あらゆる治療を施しても、1年以上の生存期間を得られるのはごく限られたケースでしかありません。
また、転移を起こさなくても巨大腫瘍になればなるほど、手術のリスク、費用は増大してしまいます。
また、外科手術をして摘出した腫瘤は必ず病理組織検査をしてもらい、腫瘍の良性・悪性、細胞の由来、転移・再発の可能性を評価してもらいましょう。
近年、その評価に基づいて追加検査や治療を行うことにより、少しづつ悪性腫瘍の手術後の生存期間等が改善されてきています。
最も大切な事は早期診断、早期治療ですので、何か発見した際には早めに動物病院を受診しましょう。
たまに、動物病院での健診でも発見できないような小さなできもので来院される患者さんもいらっしゃいます。
皮膚表面のできもので来院された場合、発生場所、発症期間(増殖スピード)、大きさの測定、形態、硬さ、痛み、炎症の有無、リンパ節の大きさの評価などを問診、視診、触診などで行います。
これらは注意すればご自宅でもできると思います。
いつも全身をくまなく触って、特に足先、内股、足の裏(パッド)、口の中(舌の下側)などまで気にかけてあげるとよいでしょう。
これらの部位は、腫瘍が少し大きくなってしまっただけで、良性腫瘍でも断脚等、大きな手術が必要になることがあります。
また、ずっと同じ大きさだったのに、ここ最近大きくなってきただとか、ゆっくりだけど大きくなって3cmを超えてきた、コリッとしていなくて境目がよくわからない、熱を持っていたり痛がるなどの徴候が見られるときは早めの受診をお勧めします。
その後、細胞診といって、可能な限り針をさして細胞を採取し、その評価を行います。
ここでの大きな目的は、腫瘍なのか炎症なのか、特定の注意が必要な腫瘍ではないか、非常に悪性度の高い腫瘍かどうかといった判断をします。
この検査は、診断や治療の方向性を決めるもので、腫瘍を断定するものではありません。
同時に、リンパ節の腫れを認めた場合には転移の可能性を同様に検査します。
腫瘍の可能性が高いと判断された場合、治療法の検討に入ります。
その後、レントゲンやエコー、血液検査などで全身状態や遠隔転移などを評価して治療法をご家族と相談していきます。
よく飼い主様から受ける質問で、『様子を見ていいですか?』というものがありますが、明らかな良性腫瘍で身体に影響のないものを除き、ご家族が気になるようでしたら積極的に切除したほうがいいでしょう。
現在の獣医療では、一度転移を起こしてしまった腫瘍は、あらゆる治療を施しても、1年以上の生存期間を得られるのはごく限られたケースでしかありません。
また、転移を起こさなくても巨大腫瘍になればなるほど、手術のリスク、費用は増大してしまいます。
また、外科手術をして摘出した腫瘤は必ず病理組織検査をしてもらい、腫瘍の良性・悪性、細胞の由来、転移・再発の可能性を評価してもらいましょう。
近年、その評価に基づいて追加検査や治療を行うことにより、少しづつ悪性腫瘍の手術後の生存期間等が改善されてきています。
最も大切な事は早期診断、早期治療ですので、何か発見した際には早めに動物病院を受診しましょう。
posted by sora-vet at 17:15| Comment(0)
| がん