2011年11月18日

腎臓病について

今回は慢性腎臓病についてお話しします。

犬猫の慢性腎臓病は初期の状態で発見されることはかなりまれです。
ごく初期においては、慢性腎臓病はほとんど症状を示しません。
診断には糸球体濾過量というものを測定しないと判断できませんが、動物ではこれを正確に測定することは非常に困難です。

初期〜中期に最も早く発見できる症状は、飲水量の増加です。
この時点では、血液検査の数値には変化がありません。
しかし、実際の腎臓の機能のうち、すでに70%が障害されていると言われています。
この頃から低塩分食や腎臓の血圧を下げる薬、余分なリンや蛋白を吸着する薬を使ってあげると、寿命はほぼ倍に出来るというデータがあります。
したがって、中齢以上の子は定期的な尿検査を心がけてあげましょう。

中期には、体重減少、食欲不振などの症状を認めます。
この頃には、腎臓の機能としては20%程度しか残っていません。
治療としては脱水症状が出ていなければ初期とほぼ同じです。

末期になると重度の脱水症状や嘔吐、貧血などを認めるようになります。
この時期は、腎臓の血圧を下げる薬はもう適応ではありません。
脱水症状を少しでも改善させるために、皮下補液や経口補液、胃潰瘍の治療、貧血を抑えるための造血ホルモンの投与などを行います。
貧血は腎臓で産生される造血ホルモンの不足によって起こると言われていますが、慢性腎臓病の患者さんでは免疫機能も落ちているため慢性感染症を持っていることも多く、炎症による貧血と鑑別が難しいことも多いです。
また、胃潰瘍からの慢性出血も原因としてありますので、盲目的に造血ホルモンの投与を続けることはせずに、1〜2週間使って効果がなければ中止したほうがいいでしょう。
当院では、皮下補液はご自宅で行なっていただいています。
以前は通院で行なっていたのですが、例えば同じ500mlを1週間に投与する場合でも、1回に500ml入れるより、1日1回(理想的には2回)70mlづつ入れてあげたほうが、はるかに患者さんの調子はいいように思われます。
また、腹膜透析という方法を行なっている病院もありますが、非常にいい方法だとは思いますが、1回ですが麻酔処置が必要なことと、毎日の処置に非常に時間がかかり、オーナー様と患者さんの負担が大きいことなどを合わせ、当院では行なっていません。
また、経口補液も非常に重要で、慢性腎臓病の患者さんには、どのステージであっても少しでも多くお水を飲ませてあげましょう。
そのためには、いつでも飲みたいときに飲めるように、たくさんお水をおいてあげたり、水道から飲むのが好きな子には少し蛇口を捻っておいて、ぽたぽたと水を垂らしておいてあげるといいかもしれません。

慢性腎臓病は、早期に発見してあげれば、かなり長期生存が望める病気ですので、定期的な尿検査と体重に変化や飲水量の変化などに少し気をかけてあげてください。
posted by sora-vet at 18:01| Comment(0) | 腎臓