2011年11月30日

呼吸器疾患の診断

重度の呼吸困難で来院される患者さんの診断は、時に非常に困難です。
それは、ストレスをかけること自体が状態の悪化を簡単に招いてしまうからです。

ストレスをかけない検査としては聴診がありますが、聴診では実際にどこがどのように悪いかは全く判断ができません。
また、中〜高齢の患者さんでは心臓疾患を伴っていることも多く、肺炎からの肺水腫(肺の中に水が溜まる状態)か、心臓病からの肺水腫かは誤診されることも多いです(正確には誤診ではなく、判断できないと言ったほうが良いでしょう)。

最低限の情報としてレントゲン検査は、ストレスはかかってしまいますが、行いたい検査です。
レントゲンなしでは、次の治療方針を立てるのも難しく、酸素吸入などの対症療法しかできないのが実際です。
レントゲン検査や血液データなどを参考に治療方針を立てていきますが、それでも間違った方向性に治療が行ってしまうことがあるのも否定できません。
したがって、状態の悪い積極的な検査が行えない患者さんに対しては、治療に対する反応性を評価して、診断を組み立てていくことが多いです。
治療に関しては、ステロイドの使用が問題になることが多いです。
犬ではステロイドが必要な喘息などの病気はかなりまれですが、猫では喘息や好酸球性肺炎などのアレルギー疾患が比較的多く見られます。
これらの病気はステロイドに非常によく反応してくれるのですが、他の疾患ではステロイド投与により悪化してしまう場合があるからです。

その診断の助けになるもので、最近、患者さんを酸素ボックスに入れて、無麻酔でCT検査をするという方法があるらしいです。
近年の高価なCTは64列を一度に撮影できるものがあり、全身を撮影しても30秒とかかりませんので、従来は麻酔、あるいは保定下でしか検査できなかったCTを、自由な状態でストレスをかけずに行うということです。
この検査では、動きますので微小な病変の評価はできないこともありますが、状態の悪い子のは非常に有効な検査法だと思います。
重度の呼吸困難の場合は、全体を評価できればよく、また肺の中の血管系まで評価できますので、ある程度心臓が原因かどうかの鑑別にもなると思います。
難点としては、単にCTがあるというだけでなく、最新の高価なCTのある病院でなくては検査できず、検査費用も高額になるということです。

しかし呼吸器疾患は、死に直結するものですので、こうした検査がより一般に普及すると良いですね。
posted by sora-vet at 10:21| Comment(0) | 呼吸器