2011年12月18日

ジェネリック医薬品

現在、当院で使用している70%以上の医薬品は人間用の薬で、そのほとんどはジェネリック医薬品です。
理由としては、安く提供できるからです。
また、海外の後発医薬品は質が悪いものがあったり、動物では吸収率が悪かったりするようですが、日本国内で製造されているもののほとんどは質も高いものだそうです。

ジェネリック医薬品を使う上で厄介なのが、薬剤名です。
後発品は薬剤名が微妙に変えてあり、病院内で処方や投薬をする時、その薬によって薬品名で呼んだり先発品の製品名や後発品の製品名で呼ぶこともあります。
人医領域でも一時期問題になりましたが、これが非常によく似た名前で別の薬剤というのが多くあります。
意外と獣医師同士では同じ名前で呼ぶことが多いのですが、セミナー等でたまに違う名前で紹介されると、なにか新しい薬が出たのか?と期待してしまうこともあります。

また、動物病院では、はじめから保険適応ではないので、一般の病院でも海外の輸入薬を使用することが多いです。(人医では海外の薬は保険適応ではなくなってしまいます。)
抗癌剤などは、有効性が示されている論文が多く出ているのに、国内では承認されていない薬が多くあります。
これらの薬は獣医師が合法的に個人輸入をするすることになりますが、手続き等に時間が1週間から1ヶ月かかります。

国内で認可されている薬でも、動物病院には卸してもらえない薬も多くあります。
IMHAに非常に有効なガンマガードという高価な薬がありますが、以前は動物病院に普通に回ってきたのですが、現在は一部の大学病院でしか扱われていません。
大きな問題なのは、製薬会社や卸業者、厚労省、農水省から、何の予告や説明もなく、いきなりこうした措置が取られることです。
我々獣医師も、動物病院での乱用が原因で人医に供給不足が起こっているのであれば、もちろん協力をします。
しかし、これらの薬は法律で使用が医師に限定されているわけではなく、獣医師も合法的に使用しているわけですので、このあたりの情報開示や獣医療の供給の公平性は保たれるべきだと思います。

一部の大学の先生はこうした意見や運動を、サービスを受ける飼い主様の方から企業や役所に訴えていくことが改善に繋がる可能性があるとおっしゃっていました。
そのような動きが起こり、より自由に、よりよい治療ができるようになることを願います。
posted by sora-vet at 10:58| Comment(1) | 日記

2011年12月07日

薬の投与量と投与間隔

『粉薬が半分くらいしか飲めていないけどいいですか?』とか『1日2回の薬が1回しか飲めませんでした』という話を患者さんからお聞きします。

答えとしては、よくはありません。
薬用量の決定は、薬物の毒性試験や最高血中濃度などから行われます。
また、投与間隔は血中半減期などから決定されています。

抗癌剤などを除き、通常動物に対する薬の処方は、最低薬用量よりも少し多めにして出していますが、2倍量の薬を処方することはほとんどありません。
したがって、内服薬は8割程度は確実に投与していただきたいです。
また、薬剤によっては量を変えることで違った効果や副作用が出るものもありますので注意しましょう。

投与回数に関しては、多くの薬剤は、血中濃度を一定以上に保つことで、持続的に効果を発揮してくれます。
薬剤によっては、パルス療法といいますが、比較的多めの量を間欠的に与えることで効果が期待できるものもありますが、その場合も予め投与間隔を指示してお出ししますので、投薬が十分な効果を上げることは難しくなります。

薬剤の投与が難しい場合は予めおっしゃっていただけると、長時間作用して1日1回で済む薬で処方したり、剤形を錠剤、粉薬、シロップなどに変更することも出来ますので、お気軽にご相談ください。
posted by sora-vet at 19:16| Comment(0) | 日記

2011年11月30日

呼吸器疾患の診断

重度の呼吸困難で来院される患者さんの診断は、時に非常に困難です。
それは、ストレスをかけること自体が状態の悪化を簡単に招いてしまうからです。

ストレスをかけない検査としては聴診がありますが、聴診では実際にどこがどのように悪いかは全く判断ができません。
また、中〜高齢の患者さんでは心臓疾患を伴っていることも多く、肺炎からの肺水腫(肺の中に水が溜まる状態)か、心臓病からの肺水腫かは誤診されることも多いです(正確には誤診ではなく、判断できないと言ったほうが良いでしょう)。

最低限の情報としてレントゲン検査は、ストレスはかかってしまいますが、行いたい検査です。
レントゲンなしでは、次の治療方針を立てるのも難しく、酸素吸入などの対症療法しかできないのが実際です。
レントゲン検査や血液データなどを参考に治療方針を立てていきますが、それでも間違った方向性に治療が行ってしまうことがあるのも否定できません。
したがって、状態の悪い積極的な検査が行えない患者さんに対しては、治療に対する反応性を評価して、診断を組み立てていくことが多いです。
治療に関しては、ステロイドの使用が問題になることが多いです。
犬ではステロイドが必要な喘息などの病気はかなりまれですが、猫では喘息や好酸球性肺炎などのアレルギー疾患が比較的多く見られます。
これらの病気はステロイドに非常によく反応してくれるのですが、他の疾患ではステロイド投与により悪化してしまう場合があるからです。

その診断の助けになるもので、最近、患者さんを酸素ボックスに入れて、無麻酔でCT検査をするという方法があるらしいです。
近年の高価なCTは64列を一度に撮影できるものがあり、全身を撮影しても30秒とかかりませんので、従来は麻酔、あるいは保定下でしか検査できなかったCTを、自由な状態でストレスをかけずに行うということです。
この検査では、動きますので微小な病変の評価はできないこともありますが、状態の悪い子のは非常に有効な検査法だと思います。
重度の呼吸困難の場合は、全体を評価できればよく、また肺の中の血管系まで評価できますので、ある程度心臓が原因かどうかの鑑別にもなると思います。
難点としては、単にCTがあるというだけでなく、最新の高価なCTのある病院でなくては検査できず、検査費用も高額になるということです。

しかし呼吸器疾患は、死に直結するものですので、こうした検査がより一般に普及すると良いですね。
posted by sora-vet at 10:21| Comment(0) | 呼吸器