先週末の土日、お休みを頂いて大阪まで動物臨床医学会年次大会に参加してきました。
動臨研に参加するのは2年ぶりです。
この学会は、セミナーもありますが症例検討会が多いという特徴があります。
今年の学会で思ったのは、あまりに発表の質に差が大きいというものでした。
これは、高度獣医療をしているかどうかではなく、一つ一つの検査の質、診断、治療の考え方に対してです。
高度な医療機器が普及して、CTやMRIといった診断ツールは、発表の場では珍しくなくなっています。
その一方で、非常にポジションの適当なレントゲンフィルムが非常に多く見られました。
近年はデジタルレントゲンの普及で、気軽にレントゲンを取る獣医師が増えましたが、レントゲンの専門の先生はやはり生のフィルムのほうが読影の範囲が広いと口をそろえて行っています。
デジタルのレントゲンは生フィルムで正確な評価ができる獣医師でないと、病変と作り出したり、消したりが簡単にできてしまいます。(誤診につながります)
また、レントゲンは正確なポジショニングで綺麗に取らないと容易に病変の見落としを起こします。
そのようなレントゲンで評価した基で、CTなどの高額な検査をしている例が多々見受けられました。
また、診断治療についても、獣医師が何人もいるような病院でありながら、きちんと標準化されている確定診断手順を踏まずに、暫定的な診断で、副作用の強いかつ効くという報告もないような抗癌剤を使用していたりします。
これは、おそらく獣医学的な好奇心が先走ってしまった結果だと思われますが、高度で侵襲的な獣医療をすすめるのであれば、より深く探求して十分な裏付けをとってから行うべきでしょう。
一方で、一般的な開業獣医師ではほぼお手上げな状況の子でも、諦めることなく積極的に治療して、その後年単位での生存、QOLの改善を得ている発表もありました。
ただし結果論であって、いつでも同じ治療が最善ということはありません。
しかし、こうした症例報告などの積み重ねが、今日の診断治療の基礎になっていることは確かで、学会で報告をして下さる獣医師のみならず、そうした積極的治療を選択された飼い主様にもほんとうに頭が下がります。
そのような方々の上で、より良い治療の提示ができることに感謝いたします。
2011年11月23日
動臨研に行って来ました。
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| 日記
2011年11月18日
腎臓病について
今回は慢性腎臓病についてお話しします。
犬猫の慢性腎臓病は初期の状態で発見されることはかなりまれです。
ごく初期においては、慢性腎臓病はほとんど症状を示しません。
診断には糸球体濾過量というものを測定しないと判断できませんが、動物ではこれを正確に測定することは非常に困難です。
初期〜中期に最も早く発見できる症状は、飲水量の増加です。
この時点では、血液検査の数値には変化がありません。
しかし、実際の腎臓の機能のうち、すでに70%が障害されていると言われています。
この頃から低塩分食や腎臓の血圧を下げる薬、余分なリンや蛋白を吸着する薬を使ってあげると、寿命はほぼ倍に出来るというデータがあります。
したがって、中齢以上の子は定期的な尿検査を心がけてあげましょう。
中期には、体重減少、食欲不振などの症状を認めます。
この頃には、腎臓の機能としては20%程度しか残っていません。
治療としては脱水症状が出ていなければ初期とほぼ同じです。
末期になると重度の脱水症状や嘔吐、貧血などを認めるようになります。
この時期は、腎臓の血圧を下げる薬はもう適応ではありません。
脱水症状を少しでも改善させるために、皮下補液や経口補液、胃潰瘍の治療、貧血を抑えるための造血ホルモンの投与などを行います。
貧血は腎臓で産生される造血ホルモンの不足によって起こると言われていますが、慢性腎臓病の患者さんでは免疫機能も落ちているため慢性感染症を持っていることも多く、炎症による貧血と鑑別が難しいことも多いです。
また、胃潰瘍からの慢性出血も原因としてありますので、盲目的に造血ホルモンの投与を続けることはせずに、1〜2週間使って効果がなければ中止したほうがいいでしょう。
当院では、皮下補液はご自宅で行なっていただいています。
以前は通院で行なっていたのですが、例えば同じ500mlを1週間に投与する場合でも、1回に500ml入れるより、1日1回(理想的には2回)70mlづつ入れてあげたほうが、はるかに患者さんの調子はいいように思われます。
また、腹膜透析という方法を行なっている病院もありますが、非常にいい方法だとは思いますが、1回ですが麻酔処置が必要なことと、毎日の処置に非常に時間がかかり、オーナー様と患者さんの負担が大きいことなどを合わせ、当院では行なっていません。
また、経口補液も非常に重要で、慢性腎臓病の患者さんには、どのステージであっても少しでも多くお水を飲ませてあげましょう。
そのためには、いつでも飲みたいときに飲めるように、たくさんお水をおいてあげたり、水道から飲むのが好きな子には少し蛇口を捻っておいて、ぽたぽたと水を垂らしておいてあげるといいかもしれません。
慢性腎臓病は、早期に発見してあげれば、かなり長期生存が望める病気ですので、定期的な尿検査と体重に変化や飲水量の変化などに少し気をかけてあげてください。
犬猫の慢性腎臓病は初期の状態で発見されることはかなりまれです。
ごく初期においては、慢性腎臓病はほとんど症状を示しません。
診断には糸球体濾過量というものを測定しないと判断できませんが、動物ではこれを正確に測定することは非常に困難です。
初期〜中期に最も早く発見できる症状は、飲水量の増加です。
この時点では、血液検査の数値には変化がありません。
しかし、実際の腎臓の機能のうち、すでに70%が障害されていると言われています。
この頃から低塩分食や腎臓の血圧を下げる薬、余分なリンや蛋白を吸着する薬を使ってあげると、寿命はほぼ倍に出来るというデータがあります。
したがって、中齢以上の子は定期的な尿検査を心がけてあげましょう。
中期には、体重減少、食欲不振などの症状を認めます。
この頃には、腎臓の機能としては20%程度しか残っていません。
治療としては脱水症状が出ていなければ初期とほぼ同じです。
末期になると重度の脱水症状や嘔吐、貧血などを認めるようになります。
この時期は、腎臓の血圧を下げる薬はもう適応ではありません。
脱水症状を少しでも改善させるために、皮下補液や経口補液、胃潰瘍の治療、貧血を抑えるための造血ホルモンの投与などを行います。
貧血は腎臓で産生される造血ホルモンの不足によって起こると言われていますが、慢性腎臓病の患者さんでは免疫機能も落ちているため慢性感染症を持っていることも多く、炎症による貧血と鑑別が難しいことも多いです。
また、胃潰瘍からの慢性出血も原因としてありますので、盲目的に造血ホルモンの投与を続けることはせずに、1〜2週間使って効果がなければ中止したほうがいいでしょう。
当院では、皮下補液はご自宅で行なっていただいています。
以前は通院で行なっていたのですが、例えば同じ500mlを1週間に投与する場合でも、1回に500ml入れるより、1日1回(理想的には2回)70mlづつ入れてあげたほうが、はるかに患者さんの調子はいいように思われます。
また、腹膜透析という方法を行なっている病院もありますが、非常にいい方法だとは思いますが、1回ですが麻酔処置が必要なことと、毎日の処置に非常に時間がかかり、オーナー様と患者さんの負担が大きいことなどを合わせ、当院では行なっていません。
また、経口補液も非常に重要で、慢性腎臓病の患者さんには、どのステージであっても少しでも多くお水を飲ませてあげましょう。
そのためには、いつでも飲みたいときに飲めるように、たくさんお水をおいてあげたり、水道から飲むのが好きな子には少し蛇口を捻っておいて、ぽたぽたと水を垂らしておいてあげるといいかもしれません。
慢性腎臓病は、早期に発見してあげれば、かなり長期生存が望める病気ですので、定期的な尿検査と体重に変化や飲水量の変化などに少し気をかけてあげてください。
posted by sora-vet at 18:01| Comment(0)
| 腎臓
2011年11月11日
猫の肝臓疾患
今回は猫の肝臓疾患に関してお話しします。
弱齢の猫に肝疾患で多い(とは言ってもかなり稀ですが)のも犬と同様、門脈シャントという病気です。
犬と異なる点は、猫では肝内シャントが多いとされ、肝外シャントに比べると治療がやや困難です。
中齢の猫では、肝リピドーシス(脂肪肝)と胆管肝炎という病気が2大疾病です。
肝リピドーシスは、比較的太っている猫ちゃんが、何らかの原因で2〜3日食べれない状況になってしまうと、体内に蓄積された脂肪が肝臓で代謝される際に重度の肝障害を引き起こす病気です。
一方、胆管肝炎は肝臓内の胆管で炎症を起こす病気です。
どちらの病気も、臨床症状は食欲不振、嘔吐、黄疸などで、検査数値などからではほとんど診断がつきません。
肝リピドーシスの治療は経腸栄養を与えることでステロイド剤の投与は禁忌とされていますが、胆管肝炎ではステロイド剤が第一選択薬となりますので、きちんと鑑別することが重要です。
両疾患の鑑別は、肝生検による細胞、あるいは組織診断でのみ行われます。
超音波検査などでも若干画像上の見え方は異なりますが、確定診断はできません。
また、肝リピドーシスは命に関わる病気で、治療が成功する場合でも食道チューブや胃チューブの設置などが必要で、治療期間も多くのケースでは数ヶ月に及びます。
胆管肝炎に関しても、ステロイドという副作用のある薬剤を長期にわたって投与しますので、きちんと鑑別しましょう。
高齢の猫では、腫瘍などもありますが、最も多い肝酵素の上昇は甲状腺機能亢進症からの2次的なものです。
また、弱齢からも起こりますが膵炎などに併発して胆管が狭窄、あるいは閉塞して黄疸や肝酵素が上昇するケースも非常に多いです。
猫では、犬に比べて肝酵素が上がりにくく、肝臓自体が原因していると考えられる場合は積極的に検査、治療を進めたほうがよいでしょう。
弱齢の猫に肝疾患で多い(とは言ってもかなり稀ですが)のも犬と同様、門脈シャントという病気です。
犬と異なる点は、猫では肝内シャントが多いとされ、肝外シャントに比べると治療がやや困難です。
中齢の猫では、肝リピドーシス(脂肪肝)と胆管肝炎という病気が2大疾病です。
肝リピドーシスは、比較的太っている猫ちゃんが、何らかの原因で2〜3日食べれない状況になってしまうと、体内に蓄積された脂肪が肝臓で代謝される際に重度の肝障害を引き起こす病気です。
一方、胆管肝炎は肝臓内の胆管で炎症を起こす病気です。
どちらの病気も、臨床症状は食欲不振、嘔吐、黄疸などで、検査数値などからではほとんど診断がつきません。
肝リピドーシスの治療は経腸栄養を与えることでステロイド剤の投与は禁忌とされていますが、胆管肝炎ではステロイド剤が第一選択薬となりますので、きちんと鑑別することが重要です。
両疾患の鑑別は、肝生検による細胞、あるいは組織診断でのみ行われます。
超音波検査などでも若干画像上の見え方は異なりますが、確定診断はできません。
また、肝リピドーシスは命に関わる病気で、治療が成功する場合でも食道チューブや胃チューブの設置などが必要で、治療期間も多くのケースでは数ヶ月に及びます。
胆管肝炎に関しても、ステロイドという副作用のある薬剤を長期にわたって投与しますので、きちんと鑑別しましょう。
高齢の猫では、腫瘍などもありますが、最も多い肝酵素の上昇は甲状腺機能亢進症からの2次的なものです。
また、弱齢からも起こりますが膵炎などに併発して胆管が狭窄、あるいは閉塞して黄疸や肝酵素が上昇するケースも非常に多いです。
猫では、犬に比べて肝酵素が上がりにくく、肝臓自体が原因していると考えられる場合は積極的に検査、治療を進めたほうがよいでしょう。
posted by sora-vet at 17:38| Comment(3)
| 肝臓