今回は血小板についてお話しします。
血小板は血管の障害(出血)に対して、血液凝固因子や血管内皮細胞などと共に止血(血液凝固)に関与します。
血小板の病気はあまり多くはありません。
血小板の増多症は、あまり臨床的な意義を持たない場合が多いですが、慢性炎症などがあると増加します。
また、巨大血小板や他の血球減少症とあわせてある時は、稀な病気ですが、本態性血小板血症という骨髄疾患が疑われます。
血小板の減少症は、多くは血小板の消費によるものです。
そのなかでもDICという病態は、様々な疾患で起こりますが、非常に生命の危険のある状態で細心の注意が必要です。
これは血管内に微小な血栓ができてしまうもので、その血栓を溶かすための因子や、また血栓を新たに作るために血液凝固因子や血小板がどんどん消費されていく状態で、その血栓が臓器に出来れば多臓器不全、血小板、凝固因子が枯渇すれば出血傾向が出ます。
DICの治療には、輸血、ヘパリン療法、効果に関する議論はわかれますが蛋白分解酵素阻害剤などが使用されます。
重要なことは、DICが疑われた場合は、決して様子を見ずにでき得るすべての治療をするということだと思います。
その他には、骨髄疾患での血小板減少症や抗癌剤等による骨髄毒性、免疫介在性血小板減少症(IMTP)などがあります。
抗癌剤を使用する場合、基本的には血小板を減らすほど薬剤強度を上げるのはあまり好ましくありません。
抗癌剤等による骨髄毒性は、始めに白血球(顆粒球)、次に血小板の産生の低下を起こします。
血小板は白血球に比べると、非常に回復が悪く、場合によっては頻回の輸血が必要になります。
IMTPは現状では確定診断できる検査項目がなく、除外診断により診断します。
IMTPに関しても命に関わる病気ですので、全身の皮膚に赤い斑点や青アザが多発したり、重度の血便、血尿などが見られたときは速やかに動物病院を受診しましょう。
人間では血小板製剤だあって、安全で有効な輸血ができますが、動物では成分輸血は難しく、また、血小板の寿命は血管外では数分と持ちませんので、輸血療法も実際は暖簾に腕押しです。
入れた量の数%の血小板が働いてくれれば…、という程度しか期待できません。
したがって、動物では決して血小板を減らさないよう、常に注意が必要であり、血小板減少症は障害が起きる前にきちんと対処することが重要です。
2011年10月23日
血液について−その4
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| 血液
2011年10月18日
血液について−その3
今回は白血球に関してお話しします。
白血球は生体防御の働きをしています。
外界から侵入した病原体や体内の異常な細胞などに対して、攻撃したり細胞内に取り込んだりして排除します。
白血球は好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などに分類されます。
好中球、好酸球、好塩基球は骨髄で同じ細胞から産生されます。
好中球は、形態から幼若な桿状好中球と成熟した分葉核好中球に分類されます。
好中球の働きは病原体を細胞内に取り込んで無毒化することで、一般に感染があると好中球が増加すると言われていますが、感染がなくても分葉核好中球が正常の何倍にも増加することはよくあります。
また、逆に重度の感染があって、その部位で好中球が消費されている場合、血液中の好中球数は減少して、桿状核好中球の割合が増加する場合もあります。
更に重度な感染があると、本来骨髄の中にあるべき後骨髄球等が出現してくることもあります。
また、白血病は血液のガンで、がん化して幼若化した骨髄球等が多量に末梢血中で検出されます。
好酸球は寄生虫やアレルギー疾患時に増加するとされています。
好酸球は細胞内に顆粒を持っており、この顆粒を細胞外に放出して強い炎症反応を起こします。
皮膚や全身に自己免疫性の病気と考えられる好酸球性の炎症をおこすことがあり、比較的猫ではよく見られます。
また、アレルギー性の皮膚炎などの場合、皮膚表面に集まってきて強い痒みを起こしたりします。
好塩基球は正常な犬、猫ではほとんど血液中には認めません。
リンパ球はリンパ節や脾臓、循環血液中に存在し、液性免疫と言われる生体防御を主に担当しています。
リンパ球は他の白血球などに活発に働くように司令を出したり、逆に過剰に働きすぎるのを抑えたりしています。
また、ウイルスなどに対しては抗体というものを産生して細胞への侵入を妨げたり、他の白血球が破壊するのを手伝ったりします。
リンパ球は最も腫瘍化しやすい白血球で、あらゆる臓器や場所でリンパ腫という腫瘍を起こします。
リンパ腫は基本的には血液の腫瘍ですので、多くの場合は化学療法が適応になります。
また、この液性免疫が暴走してしまうと、自己免疫性疾患という様々な病気を引き起こします。
単球は生体内に侵入した病原体を取り込んで無毒化する細胞です。
また、取り込んだ病原体の特徴をリンパ球に伝えたりします。
体内に壊死があると増加すると言われています。
このように白血球の増加症では、どの働きをするは血球が、どういった形態で増えているかが非常に重要です。
また、減少している場合では赤血球や血小板と同時に判断して、診断を進めていきます。
白血球は生体防御の働きをしています。
外界から侵入した病原体や体内の異常な細胞などに対して、攻撃したり細胞内に取り込んだりして排除します。
白血球は好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球などに分類されます。
好中球、好酸球、好塩基球は骨髄で同じ細胞から産生されます。
好中球は、形態から幼若な桿状好中球と成熟した分葉核好中球に分類されます。
好中球の働きは病原体を細胞内に取り込んで無毒化することで、一般に感染があると好中球が増加すると言われていますが、感染がなくても分葉核好中球が正常の何倍にも増加することはよくあります。
また、逆に重度の感染があって、その部位で好中球が消費されている場合、血液中の好中球数は減少して、桿状核好中球の割合が増加する場合もあります。
更に重度な感染があると、本来骨髄の中にあるべき後骨髄球等が出現してくることもあります。
また、白血病は血液のガンで、がん化して幼若化した骨髄球等が多量に末梢血中で検出されます。
好酸球は寄生虫やアレルギー疾患時に増加するとされています。
好酸球は細胞内に顆粒を持っており、この顆粒を細胞外に放出して強い炎症反応を起こします。
皮膚や全身に自己免疫性の病気と考えられる好酸球性の炎症をおこすことがあり、比較的猫ではよく見られます。
また、アレルギー性の皮膚炎などの場合、皮膚表面に集まってきて強い痒みを起こしたりします。
好塩基球は正常な犬、猫ではほとんど血液中には認めません。
リンパ球はリンパ節や脾臓、循環血液中に存在し、液性免疫と言われる生体防御を主に担当しています。
リンパ球は他の白血球などに活発に働くように司令を出したり、逆に過剰に働きすぎるのを抑えたりしています。
また、ウイルスなどに対しては抗体というものを産生して細胞への侵入を妨げたり、他の白血球が破壊するのを手伝ったりします。
リンパ球は最も腫瘍化しやすい白血球で、あらゆる臓器や場所でリンパ腫という腫瘍を起こします。
リンパ腫は基本的には血液の腫瘍ですので、多くの場合は化学療法が適応になります。
また、この液性免疫が暴走してしまうと、自己免疫性疾患という様々な病気を引き起こします。
単球は生体内に侵入した病原体を取り込んで無毒化する細胞です。
また、取り込んだ病原体の特徴をリンパ球に伝えたりします。
体内に壊死があると増加すると言われています。
このように白血球の増加症では、どの働きをするは血球が、どういった形態で増えているかが非常に重要です。
また、減少している場合では赤血球や血小板と同時に判断して、診断を進めていきます。
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| 血液
2011年10月14日
血液について−その2
今回は血液の中でも赤血球の病気についてお話しします。
赤血球は血液の中でも最も多い細胞で、全身への酸素の運搬を行なっています。
赤血球は骨髄の中で造血幹細胞から細胞分裂し、幾つかの成長段階を経て細胞内の核が消失して成熟赤血球となります。(ちなみに魚類や両生類では脾臓や腎臓で造血を行なっています。)
したがって、赤血球は循環血液中では細胞分裂、増殖はしません。
赤血球の病気は、減少症と増加症、すなわち貧血と多血があります。
貧血の原因としては、
血液の血管外への喪失(出血、失血、分布異常)、
血球の破壊(溶血)、
赤血球がうまく作られない(造血障害)、
のいずれかになります。
貧血の診断をするとき、まずその赤血球の形態などから再生性貧血と非再生性貧血に分類します。
再生性なら出血か溶血、非再生性なら出血、溶血の初期か、造血障害と判断します。
失血、出血に関しては一般身体検査や血小板、血漿中蛋白などの評価により判断します。
治療は基本的に止血と輸血になります。
よく止血剤といいますが、いわゆる全身の出血を止める止血剤というものは存在しません。
一番有効な止血剤は、輸血です。
血液には血小板や各種凝固因子といったものが豊富に存在します。
一般に止血剤と言われているものはそれらの凝固因子のごく一部であったり、血管強化剤といったもので、最近では殆ど使われなくなってきています。
また、血小板減少症による出血は、非常に治療が難しく、輸血しても有効利用される血小板は数%にすぎないと言われています。
血球の破壊は、薬物や寄生虫、自己免疫、血管異常などにより起こります。
薬物、毒物で代表的なものにはタマネギ中毒があります。
これは玉ねぎ等の薬剤により、赤血球の細胞膜が変性して起こります。
寄生虫は直接顕微鏡で赤血球を観察して診断しますが、困難な場合はPCR等、遺伝子検査によって診断します。
自己免疫性溶血性貧血(IMHA)は、単独で起こったり、様々な疾患に併発して起こります。
これも基本的には赤血球の形態を観察することによって診断しますが、場合によっては骨髄検査等が必要なこともあります。
血管異常による溶血は腫瘍や血栓症などにより発症し、赤血球が細くなった血管を通ることで物理的に傷つけられて起こります。
いずれの病態でも溶血性に貧血は短期間に命に関わることが多いです。
また、診断には各種の検査を総合的に判断する必要があります。
IMHAに関しては適切な治療が施されても亡くなってしまう患者さんがいます。
また、非常に有効な薬として、ヒト免疫グロブリン製剤というものがあったのですが、製薬会社の方針で動物病院には販売されなくなってしまったので、獣医師は非常に困っています。
造血障害は、白血病や感染症、鉄欠乏などで赤血球がうまく作られなくなる病態です。
鉄欠乏性貧血は、犬猫では通常の食生活をしていれば健康な個体は起こることはありません。
最も多い原因は消化管潰瘍や消化管腫瘍によりじわじわと出血が続いていること挙げられます。
慢性の嘔吐や、黒色便には注意が必要です。
その他の疾患の診断には骨髄検査がほぼ必須で、きちんと診断することでより有効な治療が選択できます。
貧血の診断は、間違った方向性になってしまうと死に直結するケースが多いので、きちんと検査をして確定診断をして、その上で治療することが最も重要でしょう。
赤血球は血液の中でも最も多い細胞で、全身への酸素の運搬を行なっています。
赤血球は骨髄の中で造血幹細胞から細胞分裂し、幾つかの成長段階を経て細胞内の核が消失して成熟赤血球となります。(ちなみに魚類や両生類では脾臓や腎臓で造血を行なっています。)
したがって、赤血球は循環血液中では細胞分裂、増殖はしません。
赤血球の病気は、減少症と増加症、すなわち貧血と多血があります。
貧血の原因としては、
血液の血管外への喪失(出血、失血、分布異常)、
血球の破壊(溶血)、
赤血球がうまく作られない(造血障害)、
のいずれかになります。
貧血の診断をするとき、まずその赤血球の形態などから再生性貧血と非再生性貧血に分類します。
再生性なら出血か溶血、非再生性なら出血、溶血の初期か、造血障害と判断します。
失血、出血に関しては一般身体検査や血小板、血漿中蛋白などの評価により判断します。
治療は基本的に止血と輸血になります。
よく止血剤といいますが、いわゆる全身の出血を止める止血剤というものは存在しません。
一番有効な止血剤は、輸血です。
血液には血小板や各種凝固因子といったものが豊富に存在します。
一般に止血剤と言われているものはそれらの凝固因子のごく一部であったり、血管強化剤といったもので、最近では殆ど使われなくなってきています。
また、血小板減少症による出血は、非常に治療が難しく、輸血しても有効利用される血小板は数%にすぎないと言われています。
血球の破壊は、薬物や寄生虫、自己免疫、血管異常などにより起こります。
薬物、毒物で代表的なものにはタマネギ中毒があります。
これは玉ねぎ等の薬剤により、赤血球の細胞膜が変性して起こります。
寄生虫は直接顕微鏡で赤血球を観察して診断しますが、困難な場合はPCR等、遺伝子検査によって診断します。
自己免疫性溶血性貧血(IMHA)は、単独で起こったり、様々な疾患に併発して起こります。
これも基本的には赤血球の形態を観察することによって診断しますが、場合によっては骨髄検査等が必要なこともあります。
血管異常による溶血は腫瘍や血栓症などにより発症し、赤血球が細くなった血管を通ることで物理的に傷つけられて起こります。
いずれの病態でも溶血性に貧血は短期間に命に関わることが多いです。
また、診断には各種の検査を総合的に判断する必要があります。
IMHAに関しては適切な治療が施されても亡くなってしまう患者さんがいます。
また、非常に有効な薬として、ヒト免疫グロブリン製剤というものがあったのですが、製薬会社の方針で動物病院には販売されなくなってしまったので、獣医師は非常に困っています。
造血障害は、白血病や感染症、鉄欠乏などで赤血球がうまく作られなくなる病態です。
鉄欠乏性貧血は、犬猫では通常の食生活をしていれば健康な個体は起こることはありません。
最も多い原因は消化管潰瘍や消化管腫瘍によりじわじわと出血が続いていること挙げられます。
慢性の嘔吐や、黒色便には注意が必要です。
その他の疾患の診断には骨髄検査がほぼ必須で、きちんと診断することでより有効な治療が選択できます。
貧血の診断は、間違った方向性になってしまうと死に直結するケースが多いので、きちんと検査をして確定診断をして、その上で治療することが最も重要でしょう。
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| 血液