近年、獣医療も進歩し、CT、MRIといった高度画像診断技術が導入されたり、各種生化学検査項目が開発されていますが、血液検査、特に血球検査は顕微鏡一つで身体に起こっている実に多くの情報を我々獣医師に教えてくれます。
血球検査をきちんと行うことにより、貧血や感染症などはもちろん、場合によっては腫瘍なども見落としなく診断に近づけることができます。
今回はそういった血液、特に血球検査についてお話ししたいと思います。
血液は、遠心分離ということをすると、液体成分である血漿と細胞成分である血球にわかれます。
血漿は栄養分やホルモンなどが溶けており、血液生化学検査や血液凝固因子で、肝臓や腎臓の機能や状態をみたり、止血機能のチェックなどの検査に使われます。
血球は大きく、赤血球、白血球、血小板に分類されます。
赤血球は酸素の運搬をしており、血液成分の35〜55%を占めています。
一般にこれが下がってしまうことを貧血といいます。
白血球は生体防御を担当しており、直接、細菌やウイルスを退治したり、時にはがん細胞を攻撃したりします。
白血球はさらに、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球などに分類され、それぞれに働きがあります。
まれに白血球が暴走してしまうと自己免疫性疾患や白血病などに陥ることがあります。
血小板は血漿中の凝固因子と共に出血を止める働きをします。
血小板も顕微鏡で観察することにより、造血機能の状態や出血がいつ起こったかなどの推察ができます。
また、最も重要なもので、DICという症状の大きな指標となります。
これらを総合的に判断して診断に近づけていきます。
今後、それぞれの血球について、少し詳しくお話ししていきます。
2011年10月09日
血液について−その1
posted by sora-vet at 10:29| Comment(0)
| 血液
2011年10月05日
高齢だから手術ができない?
最近は少しづつ変化してきましたが、相変わらずよく聞く言葉に、
『この子はもう年だから、手術はしないほうがいいですよね?』
というのがあります。
15歳の子ならまだしも、8歳くらいの子でもそういったことを言われることがあります。
結論から言うと、高齢ということが理由で麻酔、手術、治療に制約が出ることはありません。
ただし、高齢になると、心臓や腎臓、その他の臓器にも障害が起こっていることが多くなり、結果として手術のリスクが高まるということはあります。
そのため、高齢であれば、逆に術前検査をしっかり行なって、できる限りリスクを回避する方法を検討する必要があります。
リスク回避の方法としては、手術中の心電図、呼吸、血圧などのモニターはもちろんのこと、手術前後の点滴、酸素化、麻酔・鎮痛薬の選択などでもリスクを軽減することができます。
ハイリスクの場合は、麻酔、手術をする際に適応となる病気は変化すると思います。
1度の麻酔、手術で完全に治る病気であれば積極的に手術すべきですし、逆に検査のために麻酔をかけるということはあまり望ましくないかもしれません。
また、手術の目的をはっきりさせる必要もあるでしょう。
特に高齢の場合、腫瘍性疾患も多くなります。
その時に手術の目的が、完全に切除をして治してしまえるのか、完全切除は困難だけどそこに強い痛みがあるからそれを取り除いてあげるのか、すでに他に転移があるけど腫瘍のために呼吸や摂食、排尿等が難しいためそれを解除してあげるのか、などを明確にして、メリット・デメリットをしっかりと吟味したほうが良いでしょう。
もう一つ、これは実は非常に難しい問題かもしれませんが、その子が今後、どれくらい生きられるかということは重要かもしれません。
どんな若い子にも麻酔・手術は必ずリスクが伴います。
18歳のワンちゃんが心臓の弁膜症を発症したときに、内科療法ではなく外科手術によって治療する獣医師はおそらくいないと思います。
同じような病気でも1歳の子だったら、成功率が高い手術ならば積極的に行うべきでしょう。
こうした問題には、飼い主さんがどのように動物と付き合っていくかといった、それぞれの価値観が大きく影響することですので、よく考えて判断されるとよいでしょう。
『この子はもう年だから、手術はしないほうがいいですよね?』
というのがあります。
15歳の子ならまだしも、8歳くらいの子でもそういったことを言われることがあります。
結論から言うと、高齢ということが理由で麻酔、手術、治療に制約が出ることはありません。
ただし、高齢になると、心臓や腎臓、その他の臓器にも障害が起こっていることが多くなり、結果として手術のリスクが高まるということはあります。
そのため、高齢であれば、逆に術前検査をしっかり行なって、できる限りリスクを回避する方法を検討する必要があります。
リスク回避の方法としては、手術中の心電図、呼吸、血圧などのモニターはもちろんのこと、手術前後の点滴、酸素化、麻酔・鎮痛薬の選択などでもリスクを軽減することができます。
ハイリスクの場合は、麻酔、手術をする際に適応となる病気は変化すると思います。
1度の麻酔、手術で完全に治る病気であれば積極的に手術すべきですし、逆に検査のために麻酔をかけるということはあまり望ましくないかもしれません。
また、手術の目的をはっきりさせる必要もあるでしょう。
特に高齢の場合、腫瘍性疾患も多くなります。
その時に手術の目的が、完全に切除をして治してしまえるのか、完全切除は困難だけどそこに強い痛みがあるからそれを取り除いてあげるのか、すでに他に転移があるけど腫瘍のために呼吸や摂食、排尿等が難しいためそれを解除してあげるのか、などを明確にして、メリット・デメリットをしっかりと吟味したほうが良いでしょう。
もう一つ、これは実は非常に難しい問題かもしれませんが、その子が今後、どれくらい生きられるかということは重要かもしれません。
どんな若い子にも麻酔・手術は必ずリスクが伴います。
18歳のワンちゃんが心臓の弁膜症を発症したときに、内科療法ではなく外科手術によって治療する獣医師はおそらくいないと思います。
同じような病気でも1歳の子だったら、成功率が高い手術ならば積極的に行うべきでしょう。
こうした問題には、飼い主さんがどのように動物と付き合っていくかといった、それぞれの価値観が大きく影響することですので、よく考えて判断されるとよいでしょう。
posted by sora-vet at 17:33| Comment(0)
| 日記
2011年10月01日
皮膚腫瘍について
ご家族の皆さんが最も気づいてあげやすい腫瘍は、皮膚表面の腫瘍だと思います。
たまに、動物病院での健診でも発見できないような小さなできもので来院される患者さんもいらっしゃいます。
皮膚表面のできもので来院された場合、発生場所、発症期間(増殖スピード)、大きさの測定、形態、硬さ、痛み、炎症の有無、リンパ節の大きさの評価などを問診、視診、触診などで行います。
これらは注意すればご自宅でもできると思います。
いつも全身をくまなく触って、特に足先、内股、足の裏(パッド)、口の中(舌の下側)などまで気にかけてあげるとよいでしょう。
これらの部位は、腫瘍が少し大きくなってしまっただけで、良性腫瘍でも断脚等、大きな手術が必要になることがあります。
また、ずっと同じ大きさだったのに、ここ最近大きくなってきただとか、ゆっくりだけど大きくなって3cmを超えてきた、コリッとしていなくて境目がよくわからない、熱を持っていたり痛がるなどの徴候が見られるときは早めの受診をお勧めします。
その後、細胞診といって、可能な限り針をさして細胞を採取し、その評価を行います。
ここでの大きな目的は、腫瘍なのか炎症なのか、特定の注意が必要な腫瘍ではないか、非常に悪性度の高い腫瘍かどうかといった判断をします。
この検査は、診断や治療の方向性を決めるもので、腫瘍を断定するものではありません。
同時に、リンパ節の腫れを認めた場合には転移の可能性を同様に検査します。
腫瘍の可能性が高いと判断された場合、治療法の検討に入ります。
その後、レントゲンやエコー、血液検査などで全身状態や遠隔転移などを評価して治療法をご家族と相談していきます。
よく飼い主様から受ける質問で、『様子を見ていいですか?』というものがありますが、明らかな良性腫瘍で身体に影響のないものを除き、ご家族が気になるようでしたら積極的に切除したほうがいいでしょう。
現在の獣医療では、一度転移を起こしてしまった腫瘍は、あらゆる治療を施しても、1年以上の生存期間を得られるのはごく限られたケースでしかありません。
また、転移を起こさなくても巨大腫瘍になればなるほど、手術のリスク、費用は増大してしまいます。
また、外科手術をして摘出した腫瘤は必ず病理組織検査をしてもらい、腫瘍の良性・悪性、細胞の由来、転移・再発の可能性を評価してもらいましょう。
近年、その評価に基づいて追加検査や治療を行うことにより、少しづつ悪性腫瘍の手術後の生存期間等が改善されてきています。
最も大切な事は早期診断、早期治療ですので、何か発見した際には早めに動物病院を受診しましょう。
たまに、動物病院での健診でも発見できないような小さなできもので来院される患者さんもいらっしゃいます。
皮膚表面のできもので来院された場合、発生場所、発症期間(増殖スピード)、大きさの測定、形態、硬さ、痛み、炎症の有無、リンパ節の大きさの評価などを問診、視診、触診などで行います。
これらは注意すればご自宅でもできると思います。
いつも全身をくまなく触って、特に足先、内股、足の裏(パッド)、口の中(舌の下側)などまで気にかけてあげるとよいでしょう。
これらの部位は、腫瘍が少し大きくなってしまっただけで、良性腫瘍でも断脚等、大きな手術が必要になることがあります。
また、ずっと同じ大きさだったのに、ここ最近大きくなってきただとか、ゆっくりだけど大きくなって3cmを超えてきた、コリッとしていなくて境目がよくわからない、熱を持っていたり痛がるなどの徴候が見られるときは早めの受診をお勧めします。
その後、細胞診といって、可能な限り針をさして細胞を採取し、その評価を行います。
ここでの大きな目的は、腫瘍なのか炎症なのか、特定の注意が必要な腫瘍ではないか、非常に悪性度の高い腫瘍かどうかといった判断をします。
この検査は、診断や治療の方向性を決めるもので、腫瘍を断定するものではありません。
同時に、リンパ節の腫れを認めた場合には転移の可能性を同様に検査します。
腫瘍の可能性が高いと判断された場合、治療法の検討に入ります。
その後、レントゲンやエコー、血液検査などで全身状態や遠隔転移などを評価して治療法をご家族と相談していきます。
よく飼い主様から受ける質問で、『様子を見ていいですか?』というものがありますが、明らかな良性腫瘍で身体に影響のないものを除き、ご家族が気になるようでしたら積極的に切除したほうがいいでしょう。
現在の獣医療では、一度転移を起こしてしまった腫瘍は、あらゆる治療を施しても、1年以上の生存期間を得られるのはごく限られたケースでしかありません。
また、転移を起こさなくても巨大腫瘍になればなるほど、手術のリスク、費用は増大してしまいます。
また、外科手術をして摘出した腫瘤は必ず病理組織検査をしてもらい、腫瘍の良性・悪性、細胞の由来、転移・再発の可能性を評価してもらいましょう。
近年、その評価に基づいて追加検査や治療を行うことにより、少しづつ悪性腫瘍の手術後の生存期間等が改善されてきています。
最も大切な事は早期診断、早期治療ですので、何か発見した際には早めに動物病院を受診しましょう。
posted by sora-vet at 17:15| Comment(0)
| がん